南野法律事務所

法律のはなし

相続の法律相談


社会保険労務士 花岡日出美

ポイント

「夫が多額の借金を残して死亡した」「最近、父が亡くなったのですが、父は、全財産を三男に全部やる、という遺言を残していました」など、相続の疑問に花岡が答えます。
その1 相続の放棄

夫が多額の借金を残して死亡した。その場合、相続人である妻や子はどうしたらよいか。

 夫が死亡し、妻と子がいるときは、その人たちが相続人です。亡くなった夫(被相続人といいます)の遺産を相続するか否かは、相続人が自由に決めることができます。遺産がマイナスだけ、つまり借金だけの場合は、放棄をする(民法九三八条)ことによって妻や子は、亡くなった夫の借金を支払わなくてすみます。相続の放棄は、自分が相続人になったことを知ったときから(これは必ずしも夫が死亡した日とは限りません。例えば、夫が長いこと行方不明であったりして、実際は五年前に死亡していた、というようなこともあり、そのようなときは、夫が死んでいたということを知ったときからということになります)三ヶ月以内に、被相続人が最後の住んでいたところか、亡くなったところの家庭裁判所に相続の放棄の申出をしなければなりません。そうしないと、相続を放棄したことにはなりません。この放棄の申出をした場合、家庭裁判所は、三ヶ月の経過後などの事由がない限り申出を受理します。そしてこの家庭裁判所から「受理」の書面を交付されることによって相続の放棄は確定的となります。

 なお、「相続の開始を知ったときから三ヶ月」という要件は最近緩和されてきており、例えば、相続人になったことを知ってから三ヶ月を経過した後でも、被相続人に借金があることがわかったのがその後であるときは、借金があることがわかってから三ヶ月以内に相続放棄の申立をすれば、その場合でも相続の放棄は受理されます。相続の放棄をするときは、被相続人の戸籍(除籍)謄本、申出をする人の戸籍謄本を用意して家庭裁判所へ行けば、そこで受け付けてくれます。なお、三ヶ月以内であっても、亡くなった人の財産(預金などプラスの財産)を使ったりしたあとに相続の放棄の申出をしても受理されませんので気をつけて下さい。

その2 遺留分

私たちは三人兄弟です。最近、父が亡くなったのですが、父は、全財産を三男に全部やる、という遺言を残していました。長男である私は何ももらえないのでしょうか。

 あなたのお父さんが、三男に全部の財産を渡す、という遺言を害いていたとしても、三男が全財産を一人占めすることはできません。兄弟姉妹が相続人である場合を除いて、相続人(妻、子、孫、親など)には遺留分という権利があります(民法一○二八条)。したがって、あなたのお父さんが、全財産を三男にやるというような遺言を残した場合でも、なお一定の割合の遺産を三男に請求することができます。その割合は、相続人があなたのような子の場合、それから妻、孫(子が被相続人より先に死んだとき)のときは、本来の相続分の二分の一、相続人が両親のような直系尊属だけの場合は本来の相続分の三分の一、とされています。

 注意しなければならないのは、相続の開始(被相続人が死亡したときとは限らないことは相続の放棄の場合と同じです)および他の相続人に遺産の遺贈がなされたことを知ったとき(通常は、遺言書が出てきてそれを見たときが多い)から一年以内に、遺留分の請求をすることです。これを減殺(げんさい)請求と言います。ただし、この遺留分の減殺請求は、被相続人が亡くなってから二○年経つと請求できなくなります。

 あなたの場合のように、全財産を三男にやる、というような遺言の場合は、比較的わかり易いのですが、あなたにも遺産が渡されている、ところが弟の方がずっと多い、という場合も、それがあなたの遺留分の権利(あなたの場合は兄弟三人ですから、あなたの相続分は三分の一です。したがって遺留分の権利はその二分の一、つまり全遺産の六分の1)を侵害しているときは、やはり遺留分の減殺請求ができます。その場合も、具体的な数額を提示する必要はなく、「遺留分の減殺請求をする」ということが相手にはっきりわかればよいのです。一年以内に請求をしたか否かが問題となることが多いので、一般的には減殺請求は内容証明郵便でする方法がとられています。


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