南野法律事務所

法律のはなし

離婚の際に決めておくべきこと


弁護士 南野雄二

ポイント

出来れば避けたい離婚。やむを得ず、離婚せざるを得ない「子どこのある夫婦」が離婚にあたって決めておくことや手続きについてアドバイスします。

 子どものある夫婦が離婚にあたって決めておくことは五つあります。(1)子どもの親権者、(2)慰謝料、(3)財産分与、(4)養育費、(5)婚姻費用(離婚までの生活費)などです。
夫婦の協議で離婚ができない場合は、家庭裁判所に調停を申し立てて話し合いをすることができます。調停でも決まらないときに、夫婦関係を継続できないような理由がある場合などは、裁判離婚を申し立てることもできます。

一 親権者

子どもの養育監護をする人を決めます。合意で決まらないときは家庭裁判所に申し立てて決めてもらいます。家庭裁判所は、いずれの親のもとで育つのが子の養育のためによいかを考えて決めます。
子どもが幼いときは、特別の事情がない限り母親に親権を認めるのが普通です。子どもが自分で判断能力を持つようになっている場合は、子どもの意見を斟酌して決めることになります。

二 慰謝料

慰謝料とは、婚姻の破綻に対して責任の大きい配偶者から、責任のない(またはより責任の少ない)配偶者に対して支払うものです。協議で決まらない場合は地方裁判所に申し立てます。判決では三百万円から五百万円程度が多いですが、双方とも同程度の責任があると認められるケースでは慰謝料の支払はなしとなる場合もあります。

三 財産分与

婚姻期間中に二人で形成した財産を分けることです。夫が外で働き、妻は専業主婦という場合、家や土地を夫の単独名義にしている場合が多いようです。専業主婦も家事労働に従事しています。家政婦さんに頼むと毎月多額の出費になることからも分かります。
妻も家事労働で財産形成に貢献していますから財産分与を求めることができます。夫の収入が世間相場に比べて高額である(たとえば医師等)場合以外では半々を目安に交渉をすればよいと思います。

四 養育費

養育費とは離婚後の子の生活費と思ってください。親権(監護権)を有する配偶者が相手方配偶者に、子どもの生活費として請求できるものです。合意にならない場合は家庭裁判所が決めます。

五 婚姻費用の分担

夫婦は互いに協力扶助義務があります。収入から家計にお金を出して生計を立てるわけですが、これを支払わない場合は、収入のある(高い)側から、収入のない(低い)側に婚姻費用として支払わなければなりません。生活費ですから、子どもにかかる費用だけでなく、妻の生活費も含まれます。
離婚紛争等で生活費を支払ってくれない場合は、家庭裁判所に「婚姻費用の分担の審判」を申し立てて審判前の保全処分命令により早期に生活費を確保できる場合があります。支払がない場合は、給料等の差押えができます。

六 子どものとりあいの場合

少子化時代です。親権者が決まった後に、もう一方の親が子を力で奪うと人身保護裁判になります。
親権者が決まるまでに夫婦が幼い子をとりあう場合も、以前は人身保護裁判によっていましたが、現在では家庭裁判所に「子の監護に関する処分」として申し立てることができるようになりました(家事審判規則五三条)。
これらの制度をうまく使って、離婚事件でも生活費がないから不利益な解決をしたということがないようにできます


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