南野法律事務所

法律のはなし

訪問販売とクーリングオフ


弁護士 南野雄二

ポイント

悪質な押し売りにあって、不要なものを購入させられた。そんなときは「クーリングオフ」が有効です。クーリングオフの内容や注意点を説明します。
1、訪問販売に対する規制

 以前は、「押売り」といわれていたものですが、自宅などに突然セールスマンが訪れ、執拗な勧誘などに根負けして、つい要らない物をローンで買わされる、それをめぐってのトラブルがとくに昭和五○年代から急増してきました。こうした訪問販売では、取引の相手方である消費者が不当な損害を蒙ることがしばしばでした。このようなことから、消費者を保護するために昭和五三年に「訪問販売に関する法律」(「訪問販売法」)が制定されました。この法律は、制定された後、三回の改正が行なわれました。改正の内容は、対象商品の拡大、クーリングオフの期間を最初の四日間から八日間に延長し、さらに、罰則の強化などが図られました。

2、訪問販売法の内容

この法律の対象となる訪問販売の中には、セールスマンが消費者の自宅へやって来て、商品を売りつける場合はもちろんですが、それだけではなく、街頭でのキャッチセールスや、電話で好条件を提示し、業者の事務所などに出向かせて売りつけるような場合にも適用されます。
三回の改正の結果、対象となる商品は、ほとんどすべてがあてはまることになりました。神具、仏壇、墓石などももちろん入ります。このような物に限らず、結婚紹介や保養施設の利用、語学の授業をうけることなどの役務の提供など、ほとんどすべてにわたっています。

三、クーリングオフ

訪問販売のセールスマンがやって来たとき、断固拒否してしまえば、それが一番ですが、うまい言葉に乗せられて、契約書にサインしてしまった場合にどうするか。
訪問販売法では、契約書にサインをした日から計算して八日を経過するまでの間に契約を撤回する旨を書いたハガキ、あるいは手紙を業者に送ることによって契約は解約することが出来るとなっています。これをクーリングオフといいます。この場合、八日目までに撤回のハガキを出せばよく、相手に届くのが八日を過ぎてもかまいません。
この訪問販売法では、業者は必ず内容を正確に書いた書面(契約書)を消費者に交付することが義務づけられています。ですから、このような書面が交付されないときは、八日の期間は、全く進行しません。したがって、その間はいつでも解約できることになります。
高価な羽ぶとんなどを買ってしまい、取消そうと思ってあわてて電話したところ、「ウチでは解約は一切一受け付けないことになっている」と脅されて、そのまま泣き寝入りして高い代金を毎月払った、という例もあります。契約書を受けとった日から八日以内であれば、無条件で解約できるということをしっかり覚えておいて下さい。なお、契約を解約した場合は、業者が置いていった商品は返品しなければなりません。
注意しなければならないのは、化粧品や洗浄剤などのような消耗品の場合、うっかり使ってしまうとクーリングオフが出来ない場合がありますので、その点はくれぐれも注意する必要があります。この場合、業者は消費者にクーリングオフができないことを、あらかじめ消費者に告げることが義務づけられていますが、いずれにしても注意するに越したことはありません。


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