はじめにご相談を受け、その中でご依頼を受けた後の見通しや、流れについて説明させていただきます。弁護士が損害賠償の交渉の依頼を受けた場合、その流れはつぎのとおりです。弁護士特約を使える場合は、保険会社に弁護士に相談するとの連絡を入れておいてください。
ご相談を受け、損害額や責任についての必要な書類をそろえていただくと、損害額の計算をすることがきます。当方で入手できるものは、当方で入手することも可能です。すぐに計算ができる場合と、資料が揃うまでできないこともあります。
損害額の目安が立てば、弁護士費用の見積をさせていただきます。この費用は弁護士特約があるときは、保険会社が支払ってくれます。
任意保険から賠償を受けるためには、下記の4つの方法があります。
- 示談交渉(保険会社との直接交渉)
- ADR(交通事故紛争処理センターなど、裁判以外紛争処理手続)
- 調停
- 裁判
これらには、それぞれメリット・デメリットがあります。個々の事件ごとに、もっとも適切と思われる手続をご案内いたします。
ご依頼後の手続の流れを図にすると、下記のようになります。
1.後遺障害の等級が出ていて、特に不服がない場合(1コース)
出ている後遺障害等級を前提に損害額を計算して、すぐに示談交渉に入ります。
後遺障害についての自賠責保険金を急いで受け取りたいときは、併行して後遺障害保険金の被害者請求を行います。示談交渉で解決しない場合は、交通事故紛争処理センター(大阪支部)にあっせんの申立てを行います。ここでのあっせんまたは審査によって解決するケースがほとんどです。
2.後遺障害の等級に不服があるとき(2コース)
加害者の保険会社を通じて、後遺障害の等級への異議申立てを行います。自賠責保険金の受領を早くしたいときは、被害者請求を併せて行います。後遺障害の等級認定は、損害保険料率算出機構が設置する損害調査事務所が決めています。ほとんどの場合は書類審査ですので、被害者の深刻な状況が伝わりにくいため、医師の意見書や検査表などを付して等級認定のやり直しをしてもらうのです。不服が認められて等級が上がるときと、そのまま変わらない場合があります。いずれにしても、その後、決まった後遺障害等級によって損害額の計算をして、任意保険と交渉することになります。示談交渉で解決しない場合は、交通事故紛争処理センター(大阪支部)にあっせんの申立てを行います。
3.後遺障害の等級に対する異議申立の結果にも不服があるとき(3コース)
2により、後遺障害の等級認定への異議申立をしたけれど、変わらなかったため、なお不服があるときは、(財)自賠責保険・共済紛争処理機構に申立ができます。併せて、被害者請求をします。等級が改訂され、または改訂されないが異議がない場合、被害者請求により自賠責保険金が支払われます。確定した後遺障害等級に基づき損害額の計算をして、任意保険と交渉することになります。示談交渉で解決しない場合は、交通事故紛争処理センター(大阪支部)にあっせんの申立てを行います。
4.自賠責保険・共済紛争処理機構の等級認定に異議のあるとき(4コース)
この段階を超えると、後遺障害の改訂の権限を持つのは裁判所だけとなります。あなたにもたらされた障害による日常生活や労働への影響の詳細な内容を訴えて、等級の認定が誤りであること、認定等級の改訂を求めて裁判に訴えることになります。訴訟の中で、話し合い解決(和解)または、判決となり、賠償額が決められます。不服のときは控訴・上告ができます。
示談交渉
ご依頼を受けた場合、保険会社との示談交渉から始めます。
後遺障害が残る場合には、後遺障害としての認定と等級の認定を受ける手続が先行します。後遺障害の等級認定が出たら、損害額のおよその計算をして、保険会社と示談の交渉をすることになります。保険会社の回答が満足できる場合もあります。回答が適正額であると考えられる場合は、示談を成立させて、賠償金を受け取ることになります。
保険会社は、示談では、適正な金額の提示をしてこない場合も多く、その場合は、交通事故紛争処理センターに申立てを行います。
交通事故紛争処理センター
交通事故紛争処理センターは、裁判外紛争処理機構の先駆けとなった機関です。近辺では大阪(淀屋橋)にあります。
あっせん委員の弁護士が、裁判所の損害額の計算方式で損害の計算をして提示をして、話し合いの成立に向けてあっせんをしてくれます。裁判所の計算方法との違いは、弁護士費用を加算しないことと、遅延損害金を認めないことです。この点では不利ですが、それ以外の点では、裁判所と同じです。一方、手続が原則3回程度で解決する簡易な手続であるため、解決までの時間が短いことと、保険会社が、裁判ではありがちな治療に時間がかかるのは過去の病歴のせいではないか、といった争いのための争いを持ち出す可能性が低いことがメリットです。また、保険会社があっせんに応じないときは「裁定」といって、センターとしての見解を書面で示してくれ、保険会社に裁定に従うように指導してくれます。
私は、交通事故紛争処理センターの利用はお勧めだと思います。
調停申立
調停は利用する手続としてよく挙げられますが、保険会社への強制力がなく、手続も時間がかかるので、私はお勧めしません。
裁判
通常の事件は、大部分は示談、または交通事故紛争処理センターへのあっせん申立てで解決しますが、信号の色についての言い分が違うとか、事故と症状との因果関係が不明であるといった事案では、詳細な証拠により事故態様や因果関係を確定する必要があるので、訴訟を起こすことになります。また、結局それが近道だと思います。
裁判は、費用と時間がかかるのが難点ですが、判決で終了する場合は、弁護士費用の相当部分は損害に上乗せして請求できます。