南野法律事務所

保険についてのご説明

自賠責保険とは

自賠責保険と呼ばれるのは、正規には「自動車賠償責任保険」というものです。まだ自動車が普及する前、昭和30年(1955年)に作られた制度です。交通事故被害者は、加害者や車の保有者に損害賠償の請求をすることができますが、加害者等が賠償の資力を持たない時には、賠償を受けられないまま、泣き寝入りとなってしまっていました。一家の支柱が亡くなったり、重度の障害を受けて収入がなくなると、家族全員が路頭に迷ってしまいます。そこで、車両の保有者全員から保険料を拠出させて、加害者に資力がなくても最低限の賠償金を支払える保険制度が作られました。車検時に保険料を負担させ、保険料を出さないと車検を受けられない(運転できない)ようにすることにより、加入を強制するので、「強制保険」ともいわれています。

被害者の救済を主目的とする強制保険です。保険ですから、本来は加害者の損害賠償義務を肩代わりしてくれる(加害者の負担を軽減する)ものですが、その結果、被害者が賠償を得ることができるのですから、被害者の保護にも寄与します。そのことは、被害者から直接請求する被害者請求の制度を持つこと、被害者に少々の過失があっても満額の保険金が支払われること、仮渡金等、早期の支払が図られていることなどにあらわれています。しかし、自賠責保険から支払われる金額はたとえば入通院中の損害については治療費や休業補償などのすべての項目の合計で120万円しかありませんし、死亡事故や後遺障害への保険金も障害等級によって定額となっているなど、自賠責保険だけでは十分な補償にはなりません(後記の後遺障害等級表をご覧ください。保険金は、死亡事故で最高3000万円、後遺障害では最低の14級では75万円、最高で4000万円です 詳しくはこちら)。

●後遺障害別等級表(自動車損害賠償保障法施行令別表)●

大方の事故では、自賠責保険の支払いのみでは十分な補償が受けられず、不足分は、加害者や加害自動車の保有者に請求することになります。多くの場合は加害者が加入している任意保険から支払を受けることになります。

任意保険とは

任意保険とは、自賠責保険(強制保険)では十分な補償をすることができませんので、被害者が実際に受けた損害額と自賠責保険から出される保険金との差額を補償する保険です。最近は、支払う保険金の限度額のない無制限がほとんどです。人身事故だけでなく物損をカバーする対物賠償保険、また、保険契約者の自損事故や搭乗者に怪我をさせたときに支給される搭乗者賠償保険、人身傷害保険など多彩な商品が、売り出されています。後に述べる弁護士費用特約も任意保険のオプションのひとつです。
現在契約されている任意保険の大部分は、示談代行付きで、被害者との面倒な示談交渉は、保険会社がすべて引き受けてやってくれます。その結果、一方でモラルハザードと呼ばれる無責任な加害者を生み出していることも事実です。

保険会社との示談交渉

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保険会社から治療費や休業補償の打切りをいわれたら?

保険会社の担当者から、「○月以降は治療費や休業補償は出しません」と言われたときはどうすればいいでしょうか。あなたも医師も、もう治療は要らないとか、休業の必要はないと考える場合は、治療を打ち切ってもらっても構いませんが、多くの場合は、まだ治療や休業が必要なのに、無理やり打ち切らせようとすることがあります。
保険会社は症状固定が早いほど支払が少なくてすみますので、医師に早く症状固定の判断をするように求めたり、「治療費の支払は○月で打ち切ります。」との圧力をかけたりするのが普通です。
保険から支払われなくても、自己負担分を支払って健康保険を使うことができます。また、業務中や職場への通勤または退勤途中の事故であれば労災保険も使うことができます。途中から切り替えることもできます。本当に治療を続ける必要がある場合は、保険会社の打ち切り圧力に負けずに、労災保険が使える場合は労災保険を、使えない場合も健康保険を使って、必要な治療を受けてください。一方、治療の必要のない状態で、惰性で治療を続けることはマイナスの結果を呼ぶことがありますので注意が必要です。
保険会社の担当者から、「今後は治療費(や休業補償)を出せません。」と言われて、身体が痛むのに治療を中止してしまったとの話をよく聞きます。治療を打ち切ってしまうと、痛みを残しているのに必要な治療も、補償も受けられないことがありますので、慎重な判断が必要です。

労災保険が使える場合

勤労者や公務員の場合、必ず労災保険に加入しています(勤労者や公務員側は保険料を負担する必要はありません)。業務中の事故、業務で移動中の交通事故などの場合は、労災保険から、治療費、休業補償などの支払を受けることができます。
通勤や退勤途上の事故でも、通常の通勤経路を外れていないときには通勤災害として労災保険を使うことができます。会社に相談して埒が明かなければ、労働基準監督署にご相談ください。労災に該当する事故であれば必ず使えます。
小さな事業所に勤めている人に聞くと、「うちは労災保険に加入していないので、労災保険は使えない。」と言われたという話を時々聞きます。労災保険は、農林水産の一部例外を除き、1人でも雇用する場合には強制加入となっています。保険料は全額を事業主が負担することになっていて、勤労者は保険料を負担する必要はありません。
さらに、最近は、事故からあまり日が経っていないのに、保険会社の担当者から、「今後の休業補償は支払いません。」とか、「治療費は来月で打ち切りです。」などと言ってくることがよくあります。その結果、必要な治療が受けられなくなる恐れさえあるのですが、労災保険を使っていると、よほど長期にならないことには、そういうことはまずありません。
その意味で、労災である交通事故では、まずは労災保険を使うことが有利なことが多いと言えます。
労災保険では慰謝料は出ませんので、慰謝料は、先で自動車保険(任意保険)との間で調整するときに請求すればいいでしょう。

搭乗者傷害保険

被保険者の加入する自動車に搭乗している人に損害が生じたときに、被保険者の過失のある場合は通常の任意保険が賠償額を支払ってくれますが、被保険者に過失がない「もらい事故」の場合に、運転者、同乗者に支払われるのが搭乗者傷害保険です。

人身傷害保険

被害者にも落ち度(過失)があるときは、過失相殺といって、その落ち度の大きさによって、加害者(保険)に請求できる金額を差し引かれますが、その過失相殺によって加害者の保険に請求できない部分を自分の入っている自動車保険から支払を受けることのできる約款を、人身傷害保険といいます。この保険では、加害者が自賠責保険だけで任意保険に加入していない場合に、加害者から十分に賠償を受けられない場合にも支払を受けることができます。
自動車保険に加入するのは、自分が加害者になったときに、被害者に損害賠償をするのを保険に支払ってもらうのが主たる目的ですが、人身傷害保険は、自分が被害者になったときに、自分の過失分を賄い、発動される点に大きな違いがあります。

弁護士費用特約

加入されている自動車保険に弁護士費用特約がついていれば、法律相談料はもちろん、弁護士に事件をご依頼の際の着手金・報酬金など、示談交渉やあっせん、訴訟などの弁護士費用を保険で賄うことができます(最高300万円まで)。
特約の有無は、保険証券に記載されています。またご加入の保険会社に問い合わせれば教えてもらえます。

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