南野法律事務所

相続の概要

相続の概要


1.被相続人(亡くなられた方)の死亡によって相続が開始します

相続は、法律で定められた相続人と相続分があります。
また、相続されるのは、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も引き継がれます。


2.遺言書のあるとき、ないとき

被相続人が遺言を作成している場合と、作成していない場合では、相続の手続きは変わります。

遺言書のあるとき

遺言書に基づいて遺産の分割が行われますが、後述する遺留分の問題が残ります。
また、遺言書が公正証書ではなく、自筆証書である場合は、家庭裁判所において検認手続を行う必要があります。

遺言書のないとき

(1)法律で定められた相続人(法定相続人)が、法律で定められた割合で相続します。
(2)法定相続人が誰が何を相続するのか話し合い(遺産分割協議)をして、相続人全員の合意ができれば、合意内容を書面(遺産分割協議書)にして、印鑑証明書を付けて確認する方法もあります。
合意できない場合は、法定相続分のとおりに分割するか、家庭裁判所に遺産分割の調停・審判の申立をして話しあいや審判をしてもらうことができます。

相続人・相続分

亡くなった方を「被相続人」といいます。被相続人の死亡によって相続が開始します。
法律は相続人となる順位と相続分をつぎのとおり定めています。
なお、被相続人の配偶者は必ず相続人になります。

(1)第一順位 配偶者(1/2) および 子(1/2)
(2)第二順位 配偶者(2/3) および 直系尊属(1/3)
(3)第三順位 配偶者(4/3) および 兄弟姉妹(1/4)

配偶者以外の相続人が複数いる場合は、子1/2、直系尊属1/3、兄弟姉妹1/4の相続分を、それぞれ頭数で除したものが一人分の相続分になります。
子には、胎児・養子・非嫡出子も含まれ、相続分は等分となります。ただし、非嫡出子の相続分については、最高裁の判例によると、つぎのとおりとなります。

●平成13年6月以前に相続開始した事案における非嫡出子の相続分は、嫡出子の1/2となります。
●平成13年7月以降の相続については、非嫡出子も嫡出子と同じ相続分です。
●平成13年7以降に相続開始した事案でも、すでに裁判や調停、相続人全員による遺産分割の合意などで確定済みの遺産分割には影響しません。

特別受益

相続人のなかで、被相続人(亡くなられ方)から結婚の際に多額の持参金や嫁入り道具を準備してもらったり、事業のための資金を出してもらったりなど、特別に財産の贈与を受けた人を特別受益者といいます。
特別受益を受けた人と、特別受益を受けなかった人とでは不公平が生じます。この不公平をなくすために、生前贈与を受けた者がいるときにはこれを特別受益として、その贈与の価額を相続財産に加算し相続分を計算し、特別受益分を差し引きます。
但し、被相続人が差し引きしないとの意思を表示したときは差し引きしません。

配偶者居住権

新たに配偶者居住権が設けられ、2020年4月1日から施行されました。
これは、被相続人(亡くなった人)の死亡時に、その家に住んでいた配偶者に住む権利を認めたものです。
遺言で書き遺すこともできますし、遺産分割の合意で決めることもできます。
裁判所が審判で、配偶者居住権を認めた場合も同じです。
家土地以外に多くの遺産がないときは、これまでは、配偶者は他の相続人(子ら)から求められると、家土地を売却して分けることを迫られましたが、これが認められると、住み続けることが可能になることがあります。

寄与分

相続人のうち被相続人事業への労務や財産の提供、療養看護等により、被相続人の財産の維持又は増加について特別に寄与した人には、その相続分算定にあたっては貢献度に応じた増加を認める制度を寄与分といいます。
たとえば寝たきり状態の親を自宅で介護して親の財産の減少を防いだ場合には寄与分が認められる可能性があります。
もっとも、寄与分の要件を満たすかは個々のケースによって様々ですので、弁護士にご相談ください。

相続放棄

相続の開始によって相続財産(被相続人の財産)は相続人が相続します。
相続財産にはプラスの財産(現金、預貯金、不動産など)だけでなく、マイナスの財産(借金)も含まれます。
よって、相続をすれば、親の借金も子どもが引き継ぐのが原則です。
もし、被相続人が多額の債務を負っていて債務超過の場合、相続人の意思に反して過大な債務を負わされてしまいます。
そこで、これを避けるために「相続放棄」という手続きがあります。
相続放棄により親の借金を返さなくてすみます。そのかわり、プラスの財産も継ぐことはできません。
相続放棄の手続は、相続人が相続の開始を知ったときから3ケ月以内に家庭裁判所にその旨を申述しなければなりません。
ただし、3ヶ月を超えても相続放棄できる場合がありますので弁護士にご相談ください。
なお、相続を受ける側としては、相続放棄のほかに、限定承認、単純承認というのがありますので、説明しておきます。

相続分の譲渡

相続財産は相続人の共有財産となります。相続人は自分の持分(相続分)を自由に譲渡することができます。
譲受人は、他の相続人でも相続人以外の人でもかまいません。譲渡するにあたり他の相続人の同意はいりませんので、各相続人が単独で自由に譲渡することができます。

遺産分割

相続人間で遺産分割をするにあたっては、特別受益、寄与分、相続分の譲渡を考慮して、相続人全員でどのように分配するかを協議します。
遺産分割は、相続人全員の協議がまとまって成立します。
もし一人でも反対したら遺産分割は成立しません。協議による分割がまとまらないときや、協議が難しいときは、各相続人は家庭裁判所に遺産分割の調停を申し立て、遺産を分割します。
調停による分割がまとまらないときは、家庭裁判所の裁判官が、遺産の種類、性質や遺産を受け取る側の相続人の年齢、職業、生活状況などの事情を考慮して、遺産を分割します(このような方法を審判といいます)。

遺産分割協議書

遺産分割協議書とは、遺産の帰属について相続人が話し合って合意した内容をまとめた書類です。
作成にあたっては、相続人全員が署名押印します。印鑑は実印で印鑑証明書1通の添付が必要です。
不動産の移転登記を法務局に申請する場合や、銀行預金や、株式の相続手続きには遺産分割協議書(印鑑証明書付き)を提出します。
遺産分割協議書はご自分で作成できますが、弁護士に相談・依頼すれば相続人の確定から協議書の作成、遺産分割の相続手続きまで依頼することができます。

遺留分

被相続人は遺産をどのように処分しようと自由に行うことができます。
しかし、被相続人の財産が相続人以外の第三者に遺贈したり、一部の相続人のみに相続させるという遺言を残した場合、
遺産をもらえなかった相続人は期待が裏切られてしまいます。
そこで、相続人について一定割合は最低限、侵害されない割合を法律で決められています。
法律上確保される最低限の割合を遺留分としています。遺留分の割合はつぎのとおりと定められています。

(1)直系尊属のみが相続人である場合は、相続財産の1/3
(2)前記(1)以外の場合は、相続財産の1/2

この割合に各相続人の法定相続分を掛けた割合が各相続人の確保できる相続分となります。
なお、兄弟姉妹には遺留分はありません。

遺留分減殺請求

遺留分減殺請求遺留分を侵害された相続人は侵害されたことを知った時から1年以内に返還を請求することができます。
この返還請求は、裁判によらなくても内容証明郵便でもできます。
なお、遺留分が侵害されていたことを知らなかったとしても、相続開始から10年で請求する権利が消滅します。
遺留分減殺請求を主張されたい場合は、時効の問題が生じることもありますので、お早めにご相談ください。

相続登記

遺言書、遺産分割協議書により、不動産の相続がある場合、取得される方が申請人となって、不動産の所有名義を相続人(受遺者)に移転登記をすることになります。
遺言書、遺産分割協議書がなくても、相続人全員が法定相続分に従った持ち分による共有としての相続登記をすることもあります。

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